梅田Y橋でたまたま見かけた Pico Neo3 Link というスタンドアロン型VRヘッドセットを勢いで買ってみたら、PCフライトシミュレーター用としてめちゃめちゃ快適でした。3回シリーズレビューの最後は実際に使ってみて気付いた点と先ごろ新発売になり話題沸騰中 Pico4 との比較記事です。
買ってから1ヶ月以上各種フライトシムやらFallout4VRやらガッツりプレイしまくったので長時間プレイしてて気づいたことをいろいろメモしておきます。
スピーカーの音質について
ネットの情報などを見ていると音質が酷いという評価が散見されるのですが、個人的にはそこまで酷いとは感じませんでした。音楽鑑賞に使えるほどの音質はありませんがゲームプレイ用と割りればこんなもんじゃないでしょうか。安い液晶モニタについてるスピーカーから直接音出しでゲームを遊ぶような感じを想像してもらうといいです。
見てのとおり側面バンドに隠れるような位置にスピーカーがあり、おそらく安価なパーツを使っているだろうからこれで音質を求めるのが無謀というもの。プレイしながら耳の周辺を手のひらで包むようにしてみると消えていた低音などが戻ってきてわりとマシな音質になるので音が耳にとどく前に空間に拡散してしまっている感じなんでしょうね。オーディオジャック経由のイヤホンの音質は特に問題ないようなので、音モレの観点からもイヤホンが推奨でしょう。私はテストプレイ以外ではだいたいイヤホンつけてます。
WiFi接続とDP接続の差について
PicoLinkを使ったWiFiとDPでは私みたいなボンクラでも一見して気がつくほどの画質の差があります。無線の場合は映像をPC側で不可逆圧縮してからヘッドセットで復元するので画質が劣化したり遅延が発生したりします。それでも視野をうごかさず映像の動きも少ない場面ではけっこうクリアな映像なので「これなら無線でもええかな?」という気になってくるのですが、首をすばやく振ったり動きの速い場面ではビットレートが追いつかず画質が一段落ちたり映像の一部が欠落したりします。おそらく映像のタイプによってもこのあたりの事情はかわってくるはずで例えばアニメ調のノッペリした絵がメインだと問題ないのにフライトシムのようなリアル調グラフィックだと劣化が酷い、みたいなことはあるかもしれません。DPではレンズによる光学的な劣化はありますが WiFi のような圧縮にともなう劣化や遅延はありません。またDP接続の場合グラボの映像出力をそのまま使うのでPC側の処理能力を食うことがありません。フライトシミュレータのようなPCにガッツリ処理能力が要求されるゲームではこの点も考慮する必要があります。これがあるのでPCVR専用とくにフライトシム目的なら新機種の Pico4 より Pico Neo3 Link がむしろおすすめじゃないかなぁ?という気がしています。
装着感について
巷の評判では Pico Neo3 Link はVRゴーグルとしてのつけ心地がかなり良いという評価が多いのですが私も同感でした。VRゴーグルの装着感が不快になる要素は主に2つあって
・重い、首が疲れる
・長時間つけてると熱がこもってムレてくる、レンズが曇る
というものですがいずれも Pico Neo3 Link ではほとんど気になりません。重さは各社モデルと比較して劇的に軽いわけでもないのですが後頭部の部分がバッテリになっていて本体のカウンターウェイトになるため非常に安定しており、プレイ中どんどんズリ下るみたいなこともなくかなり快適と感じました。また本体が異様に熱くなるようなこともなくノーズパッドをつけて数時間ブッ通しでプレイしても熱がこもったりレンズが曇ったりするようなことはありませんでした。
ただし気になったのが目のフォーカスの合うポンイトがややピーキーなことで、ちょっとでもズレると視界がボヤけがちになるところですかね。IPD調整が3段階しかないのも関係あるかもしれません。
VR酔いについて
私は幸か不幸かこれまでにVR酔いというものを経験したことがなく、Pico Neo3 Link がVR酔いしやすいデバイスなのかどうかについてまったく判断できません。何十年もフライトシムの黎明期から3D画面を見つづけて鍛えられたのか元々そういう体質なのかわかりませんが、フライトシムはじめ Doom だとか Quake みたいなヌルヌル動く3D-FPSゲームを若い頃は徹夜で遊んだりもしましたが3D酔いして気持ち悪くなった経験がないんですよね。Pico Neo3 も6時間ぐらいブッ通しでプレイしたりしましたがまったく酔いなどは感じませんでした。
Pico4 と比較
先ごろ Pico Neo シリーズの最新モデルになる Pico4 が発売となりました。Neo3購入時にはすでに年内に新型が出るかもしれないというリークは知っていたのですがまさかこんな早いタイミングで出てくるとは予想外でした。仕様が明確になった今 Pico4 と Pico Neo3 Link の比較について述べておきます。ちなみに Pico4 のPDFマニュアルは公式サイトからダウンロードできるようになっています。主にPCVR機の観点からみた優劣を以下にまとめてみました。
– Pico4 で良くなった項目 –
小型化できかつ映像がクリアになる
※ただし暗くなりがちというデメリットも…
Neo3の片目1832×1920から2160×2160ピクセルに向上
Neo3よりやや広い105度となるようです
Neo3が3段階切り替えだったのに対しPico4は62mm<->72mmの無段階調整が可能に
VRC民に朗報
AR/MRっぽいアプリが期待できる…かも?ただし単眼
本体奥行はかなり薄くなりトータルで50g程度軽量化
他にメモリも6Gから8Gに向上していますがPCVRならほとんど無意味だし、スタンドアロンアプリでも場合によって利点があるかも(?)ぐらいの感じです。ちなみにSoCは両者まったく同じ Snapdragon XR2 を採用しているとのことです。
– Pico Neo3 Link のほうが良い項目 –
Pico4はDPポートが無くなりました。オプションでワイヤレスDP接続ドングルが予定されているけども発売時期や詳細は不明
Pico4はイヤホン用のオーディオジャックが無くなりました。USB-CのオーディオDACは可能
– 当初情報が錯綜していた仕様について –
Pico4のいくつかの仕様については当初無いと言われていたものが結局存在したという混乱した状況があったため、それらについてメモしておきます。
PCVR…
Pico4 は DPポートが無くなったのでDPケーブル接続によるPCVRはできないですが、WiFiモードおよび USB による有線接続のPCVRは可能となっています。有線接続でも映像の圧縮が入るため画質はDP接続よりも劣化します。劣化程度についてはアプリや環境次第でいろいろ評価がわかれるようですがおおむねPicoの公式ソフト標準状態ではけっこう酷いといわれていてストアから購入できる Virtual Desktop を導入すると劇的に改善されるようです。また公式ソフトでも設定をつめるとまあまあ良い感じ…らしい。Pico は各種アプデはかなり積極的にやっていくスタイルのようなので今後に期待ですかね。
タッチセンス…
Pico Neo3 Link はボタンにタッチセンスがなくVRChatユーザーにはその点がマイナスとなっていました。Pico4の公式マニュアルには特にタッチセンスがあるような記述がなく当初は公式広報からも無いという発言がありタッチセンサーは無いのではないかと推測されていましたが、既に販売済みの実機において VRChat のジェスチャーが動作しているのでタッチセンサーはあるで確定です。
価格…
価格は128Gモデルが49000円、256Gは59400円と円安にもかかわらず事前予想よりかなり攻めた値段になっています。
– 公式動画でめっちゃプッシュされてるPico4のイノヴェーティヴな要素について –
公式発表動画において Pico4 で新たに追加されるフィットネス関連とかアバター要素、OSの新機能とかは正直自分的にはあんま興味なくてロクに調べてもいないので本記事ではオミットしています。PICOが創出する新世代VRワールドのイノベーションに興味ある方は公式動画をご覧いただくとそのクリエイティヴで革新的なヴィジョンを確認いただけるでしょう。
総合的に見てPico4のほうがハードウェアの出来は上なのですが製品コンセプトが単体利用(フィットネスアプリ向け)に特化する方向になっていて、Pico Neo3 Link の後継が Pico4 という事前のイメージとはやや違う様相となっています。特殊なジャンルのPCVRにしか眼中にない私的にはやはりDP接続が無くなったのはマイナス。またつなぎっぱなしで充電しつづけて半日連続プレイみたいなこともむつかしそうです。とはいえこの手のガジェットは実際使ってみるまでわからない事が多いし、そもそも Pico Neo3 Link を衝動買いしたおかげで久しぶりにガジェットにめっちゃハマってるのも確かなのでPico4の現物を体験したらまた衝動的に買ってしまうかもしれません。
ここ数年は特にレビューしたいガジェットもなく、スマホ/タブレットあたりは道具として完成されすぎてて自分的にはもう終ってる感じで新製品に興味もなく本ブログも完全に放置だったんですけども、久し振りにどっぷりハマれるおもしろガジェットに出会えたなぁーという喜びがあります。